いい商品なのに売れない理由とは?価値を「選ばれる理由」に変えるブランディング
「いいものなのに、売れない」に足りないもの
「こんなにいいものなのに、なんで売れないんだろう」
そう思ったことが、何度もあります。
地域のつくり手や事業者の方と話していると、
「品質には自信があります」
「素材にはこだわっています」
「昔からこの製法を守ってきました」
そんな言葉を聞くことがあります。
実際に現場を訪れ、つくっている様子を見たり、話を聞いたりすると、そのこだわりに驚かされることも少なくありません。
これだけ手間をかけているのに。こんなに面白い技術があるのに。どうして、もっと知られていないんだろう。
でもちょっと視点を考えてみると、こんなふうにも思えます。
そもそも、私は何をもって「いいもの」だと思っていたんだろう。
そして、もうひとつ。
「いいもの」であることと、「選ばれるもの」であることは、同じなのだろうか。
「いい商品」なのに売れないのは、なぜ?
商品が売れない理由は、一つではありません。
そもそも知られていない。魅力が十分に伝わっていない。価格が合っていない。買いたいと思っても、購入できる場所が分からない。競合商品との違いが分からない。
あるいは、つくり手が想定しているほど、その商品を必要としている人が多くない可能性もあります。
だから、売れない理由を考えるときに、「もっと宣伝しよう」「パッケージを変えよう」「SNSを頑張ろう」と、すぐに解決策を決めてしまうのは少し危険です。
その前に、確かめたいことがあります。
その商品は、誰にとって、どんな価値があるものなのか。
まずは、そこから考えてみたいと思います。
「いいもの」は、誰にとっていいもの?
例えば、伝統工芸の器。つくり手にとっては、土の質や釉薬の調合、焼き方、長年培ってきた技術が大切な価値かもしれません。
でも、器を買う人が考えているのは、「この器に何を盛ろうかな」「うちの食卓に合うかな」「毎日使いやすいかな」ということだったりします。もちろん、技術や歴史に惹かれて購入する人もいます。
ただ、つくり手が大切にしていることと、買う人が魅力を感じることは、必ずしも同じではありません。
どちらが正しいという話ではなく、見ている場所が違うんです。
つくり手は、どうつくっているかを知っている。
生活者は、自分の暮らしに何をもたらしてくれるかを考えている。
この二つが、うまくつながっていないことがあります。
つくり手が考える「いいもの」が、そのまま生活者の「欲しいもの」になるとは限らない。
私は、この間にあるズレを見つけることが、ブランドづくりの大切な仕事の一つだと思っています。
「こだわり」は、そのまま買う理由になる?
商品紹介で、よく見かける言葉があります。
「職人が一つひとつ手づくりしています」「厳選した素材を使用しています」「伝統製法を守り続けています」どれも大切なことです。
でも、そこで説明が終わってしまうと、「なるほど、すごいですね」で止まってしまうことがあります。
例えば、手づくりの器なら、一つひとつ表情が違う。手に持ったときの収まりがいい。いつもの料理が、少し違って見える。そんな魅力があるかもしれません。
ここで大切なのは、
「何にこだわっているか」だけではなく、「そのこだわりが、使う人に何をもたらすのか」まで考えること。
ただし、想像だけで魅力をつくってはいけません。
本当に使いやすいのか。どんな人が、どんな場面で魅力を感じるのか。実際に使う人の声を聞いたり、暮らしの中で使われている様子を見たりして、確かめる必要があります。つくり手のこだわりを、生活者にとっての価値へ翻訳する。
そこまでできると、商品の伝え方は変わってきます。
商品を変える前に、「出会い方」を変えてみる
商品が売れないとき、「今の人に合う商品へ変えなければ」と考えることがあります。もちろん、商品そのものを見直す必要がある場合もあります。でも、その前に、出会い方を変えてみるという選択肢もあります。
隠岐諸島で唯一の酒蔵、隠岐酒造の新しい日本酒ブランド「Danshu?」に関わったときにも、そんなことを考えました。
日本酒にあまり馴染みのない人に、どうすれば興味を持ってもらえるだろう。
日本酒の歴史や製法を詳しく説明することも、一つの方法です。
でも、そもそも日本酒を飲む機会が少ない人にとっては、その説明を聞くきっかけ自体がないかもしれません。
そこで考えたのは、
どんな時間の中で、このお酒と出会ってもらいたいか。
ということでした。
友人と集まる時間。音楽を楽しむ時間。何かを祝って、乾杯する瞬間。
「日本酒を飲もう」と構えるのではなく、楽しい時間の中に自然と日本酒がある。
Danshu?では、「思い出は、乾杯のあとに生まれる。」という言葉を軸に、そんな日本酒との出会い方を提案しています。
ここで変えようとしたのは、日本酒が長く培ってきた価値そのものではありません。
日本酒と、これから飲む人との出会い方です。
商品の魅力が足りないのではなく、その魅力を感じてもらう場面が、まだつくれていない。そんなこともあるのだと思います。
「欲しい」と「買う」の間にも、距離がある
ただし、ここまでの話で、「商品の魅力が伝われば、売れるようになる」と言い切ることはできません。実際は、そんなに単純ではないからです。
例えば、SNSで商品を見て「いいな」と思った。でも、どこで買えるのか分からない。オンラインショップを見つけた。でも、商品のサイズ感が分からない。購入を検討したけれど、送料を含めると予算を超えてしまう。
一度買って満足した。でも、次に買うきっかけがない。
こうしたことは、どれも起こり得ます。
商品に魅力があっても、購入までのどこかで止まってしまう。
だから、ブランドづくりを考えるときには、コンセプトやデザインだけでなく、
価格。販路。商品情報。購入までの流れ。購入後の体験。そうした接点も見ていく必要があります。
「欲しい」と思うことと、「実際に買う」ことの間にも、まだ距離がある。
そして、その距離を縮めることも、ブランドを育てる仕事の一つだと思っています。
「売れない理由」を、3つの視点から考えてみる
「いいものなのに、売れない」
そんなとき、私たちは大きく3つの視点から考えたいと思っています。
01|価値は、見つかっているか
まず、その商品が持つ価値を、本当に理解できているか。
技術。素材。歴史。つくり手の考え方。長年続けてきた理由。そして、実際に使っている人が感じている魅力。
自分たちでは当たり前だと思っていることの中に、まだ言葉になっていない価値があるかもしれません。
02|価値は、伝わっているか
次に、見つけた価値が、届けたい相手に伝わっているか。
つくり手の説明で終わっていないか。生活者が、自分の暮らしの中で使う姿を想像できるか。その商品を選ぶことで、どんな時間や体験が生まれるのか。
「何がすごいか」だけではなく、「自分にとって何が嬉しいか」。
そこまで伝わっているかを考えます。
03|価値を、選べるようになっているか
そして最後に、欲しいと思った人が実際に買えるようになっているか。
どこで買えるのか。価格に納得できるか。必要な情報がそろっているか。安心して購入できるか。また買いたいと思える理由があるか。
ブランドへの興味が生まれても、購入までつながらなければ、売上にはなりません。
だからこそ、
価値を見つけること。
価値を伝えること。
価値を選べるようにすること。
この3つをつなげて考える必要があるのだと思います。
「いいもの」を「選ばれるもの」にするために
「いいものなのに、売れない」
そんなとき、つい商品に何かを足そうとしてしまいます。
新しい機能を加える。デザインを変える。新しいストーリーをつくる。もちろん、それが必要な場合もあります。でも、その前に考えたいことがあります。
その商品の良さは、買う人にとっての「欲しい理由」になっているだろうか。
その商品があることで、どんな時間や体験が生まれるのだろうか。そして、欲しいと思った人が、ちゃんと買えるようになっているだろうか。
いいものをつくることと、売れる仕組みをつくることは、別の仕事です。
どちらか一方だけでは、うまくいかないこともあります。
いいものをつくる人がいる。その価値を必要としている人がいる。でも、両者が出会えていなければ、商品は選ばれません。
だから私たちは、ものづくりの現場で大切にされていることを知るのと同じくらい、それを使う人の暮らしを知ることも大切にしたいと思っています。
つくり手が大切にしている価値と、生活者が感じる価値。
その間にある距離を見つけ、つなぎ直すこと。
それが、ブランドづくりにできることの一つなのだと思います。
「いいもの」を、ちゃんと届くものへ。
tsumugiでは、企業や地域がこれまで積み重ねてきた価値を見つけ、それを今の社会へ届けるブランドづくりを行っています。
FINDでは、技術や歴史、つくり手の想い、顧客との関係を紐解き、ブランドの価値や方向性を整理します。
PROJECTでは、見つけた価値を商品・サービス、Webサイト、EC、パッケージ、SNSなどの顧客接点へつなげていきます。
「品質には自信があるのに、なかなか売れない」
「商品の魅力を、うまく伝えられていない」
「発信はしているけれど、購入につながっていない」
そんな課題を感じていたら、まずは今ある価値と、その届け方を一緒に見つめ直してみませんか。