ブランドストーリーとは?つくる前に「価値」を見つけるブランドづくり
ストーリーをつくる前に、何をするべきなのか。
ブランドをつくるとき、「ストーリーが大事です」と言われることがあります。
たしかに、ストーリーは大事です。
商品がどうやって生まれたのか。誰がつくっているのか。なぜ、この仕事をしているのか。
その背景を知ったことで、それまで何とも思っていなかった商品が急に気になった。そんな経験は、皆さんにも心当たりがあるのではないでしょうか?もちろん私にもあります。
でも、ブランドづくりで最初から「どんなストーリーをつくろう?」と考えることには、少し違和感があります。ストーリーは、ゼロからつくるものなのでしょうか。
その前に、やることがあると思っています。
ブランドストーリーとは?
ブランドストーリーとは、企業や商品が持つ背景や価値、考え方を、物語として伝えるものです。
創業の背景。商品が生まれた理由。つくり手の想い。受け継がれてきた技術。地域との関係。お客さんとの出来事。
こうしたものを伝えることで、機能や価格だけでは見えなかったブランドの姿を知ってもらうことができます。
だから、ブランドにストーリーがあること自体はとても大切です。
ただし、
ストーリーそのものが、ブランドの価値なのではない。
と私たちは考えています。ストーリーになる前に、そこには何かがあるはずだからです。
ストーリーは、「つくろう」とすると少し危ない
「ブランドストーリーをつくりましょう」となると、魅力的な物語を探し始めます。
創業者の想い。商品の開発秘話。乗り越えてきた苦労。社会的な意義。もちろん、本当にそこにある話なら問題ありません。
でも、ストーリーをつくること自体が目的になると、
「どうすれば感動してもらえるだろう」「どんな話なら共感してもらえるだろう」「もっとドラマチックにできないだろうか」と、少しずつ外側に答えを探し始めることがあります。
すると、本当にその会社が大切にしていることよりも、
“共感されそうな話”が前に出てしまう。それでは、ブランドを伝えているようで、いつの間にかブランドから離れてしまいます。
その会社には、すでに「材料」がある
企業の方と話していると、こちらが「それ、面白いですね」と言ったことに対して、「そうですか? 昔からやっているので」と返されることがあります。
たとえば、何十年も同じ生産者から材料を仕入れている。最後の工程だけは、今でも必ず人の手で行っている。創業した頃から変えていない考え方がある。地域では当たり前に使われている素材がある。お客さんとの付き合いが、親子二代にわたって続いている。
会社の中にいる人にとっては、どれも「普通のこと」です。毎日やっているから、わざわざ話すほどのことではない。
でも外から見ると、「なぜ、そこまで続けているんですか?」と聞きたくなることがあります。
その「なぜ?」の奥に、ブランドのストーリーになるものが眠っていることがあります。
「昔からこうなので」を、もう一度見てみる
ブランドの材料は、派手な出来事だけではありません。
むしろ、「昔からこうなので」「これが普通なので」「特に理由は考えたことがないですね」そんなところが気になります。
なぜ、その素材を使い続けているのか。
なぜ、その工程だけは省かないのか。
なぜ、その商品をつくり続けているのか。
なぜ、そのお客さんとの関係が何十年も続いているのか。
なぜ、それだけは変えなかったのか。
問い直していくと、
品質に対する考え方だったり、ものづくりへの姿勢だったり、人との向き合い方だったり、地域との関係だったり、その会社が長い時間をかけて積み重ねてきた価値が見えてきます。
ストーリーを考える前に必要なのは、まず、その材料を見つけること。なのだと思います。
「100年続いている」だけでは、まだストーリーじゃない
たとえば、「創業100年です」という会社があったとします。
100年続いてきたこと自体は、もちろんすごいことです。
でも、「創業100年」という数字だけでは、まだその会社のストーリーは見えてきません。
その100年間で、何を守ってきたのか。
逆に、何を変えてきたのか。
どんな人が関わってきたのか。
どんな危機があったのか。
なぜ、それでも続けてきたのか。
時代が変わっても、なぜこの商品をつくり続けているのか。
そこまで見ていくと、「100年」という数字の奥から、その会社にしかないものが見えてきます。
歴史が長いこと自体を語るのではなく、その歴史の中にある価値を見つける。
ブランドストーリーを考えるときに大切なのは、そこだと思っています。
いいストーリーは、「出来事」だけでできていない
ブランドストーリーというと、創業秘話や苦労話のような「出来事」を探したくなります。でも、必ずしも大きな事件が必要なわけではありません。
何を選んできたのか。何を断ってきたのか。何を変えなかったのか。なぜ、それを続けているのか。
そこには、その会社の判断があります。そして、その判断を何度も繰り返しているなら、その奥には、その会社なりの価値観があります。
つまりブランドストーリーは、「何があったか」だけではなく、「そのとき、なぜそうしたのか」まで見ていくことで、その会社らしいものになっていきます。
ストーリーは、価値を伝えるための「形」
私たちは、ストーリーそのものがブランドの価値なのではないと考えています。
その前にあるのは、会社が積み重ねてきたもの。ものづくりへの姿勢。人との関係。土地との関係。技術。文化。考え方。まだ本人たちも価値だと気づいていないもの。まず、それを見つける。
そして、「なぜ、それが大切なのか」を考える。そこから、今を生きる人にも伝わるように編集する。その結果として、ストーリーという形になることがあります。
だから順番は、ストーリーをつくる。ではなく、
価値を見つける。
↓
なぜそれが大切なのかを知る。
↓
今の人にも伝わる形へ編集する。
なのだと思います。
ストーリーは、ブランドの「答え」ではなく「伝え方」
ここを分けて考えると、ブランドストーリーの役割も少し見えやすくなります。
ブランドの価値そのものと、その価値を伝える方法は、同じではありません。
たとえば、「職人が最後の工程を必ず手作業で行っている」という事実があったとしても、大切なのは「手作業だからすごい」と言うことではありません。
なぜ、その工程だけは人の手で行うのか。
そこに、「最後は必ず自分たちの目で品質を確かめたい」という考え方があるのなら、本当に伝えたいのは、その姿勢かもしれない。
手作業という事実は、その価値を伝えるためのひとつのエピソードになります。
つまり、
ストーリーはブランドそのものではなく、ブランドの価値を人に届けるための形のひとつ。
そう考えると、無理に感動的な話をつくる必要もなくなります。
「共感される話」より、「本当にあるもの」を
ブランドには、ストーリーが必要です。
でも、感動する話をつくらなくてもいい。社会的に立派な理由をつくらなくてもいい。無理に「共感」を生み出そうとしなくてもいい。
まずは、自分たちがすでに持っているものを見てみる。
毎日やっていること。昔から続いていること。なぜか変えずにいること。お客さんから言われること。自分たちでは価値だと思っていなかったこと。
そこに、まだ言葉になっていないブランドの材料があるかもしれません。
だから私たちは、ストーリーをつくる前に、価値を見つける。そこからブランドづくりを始めたいと思っています。
ストーリーになる前の「価値」を、一緒に見つける。
tsumugiのFINDでは、企業や地域がこれまで積み重ねてきたものを紐解きながら、まだ言葉になっていない価値を見つけていきます。
歴史。技術。商品。文化。土地との関係。お客さんとの関係。
そして、「昔からこうなので」と、当たり前に続けてきたこと。
そこにある価値を見つけ、「なぜ、それを大切にしてきたのか」を考え、これからのブランドの言葉や体験へつなげていく。
「自分たちの価値を、うまく言葉にできない」
「これまで大切にしてきたものを、これからどう伝えればいいのか分からない」
そんな段階から、一緒に考えます。